東京医科歯科大学教授 藤田紘一郎先生が寄生虫博士と呼ばれていることは知っていましたか?
寄生虫とアレルギー疾患の関係を研究して多くの論文を書いています。「回虫が消えたからアレルギー疾患が消えた」という論文です。
こんなことが書いてあります。
・有史以前から人と共生してきた寄生虫が、栄養を横取りするだけで悪さはしない。むしろ人が元気でいてくれないと自らの生存リスクがあり困る事だ。
・IgEは寄生虫に対する免疫グロブリンで、花粉などアレルゲンが入ってもヒスタミンなど化学物質を出さないように働いていた。
・戦後、社会の清潔化が進んだことで、上下水道が発達し、寄生虫の駆除が行われ寄生虫の生きることができなくなった。
・この結果、寄生虫に対して働いた免疫が職を失うことになり、免疫(IgE)が過剰反応するようになった。結果として花粉が肥満細胞(マスト細胞)IgEと結合し化学物質であるヒスタミンを出す。
・寄生虫卵を飲んでも孵りません。寄生虫を持つ人のウンチが川に流され、卵が孵化した時にミジンコに食べられ、このミジンコをサケやマスが食べないと人の体内には入りません。
・寄生虫排除だけでなく、超清潔志向になってしまいました。
殺菌、抗菌、除菌、防臭グッズが氾濫していて、腸の中の良い菌が生きていけない環境になっている。
本来、腸は人の体の免疫の7割を担っているのに良い菌が生きられず、人の免疫力が低下している。
・国民の30%、9歳以下の子供は40%以上が何らかのアレルギーにかかっている。大腸菌のO157も本来は弱い菌で、普通の腸内細菌を持った人なら恐れるものではないものだ。
・病原菌から身体を守ってくれる皮膚常在菌や腸内細菌などの「共生菌」まで、お金をかけてせっせと殺してしていることに気づいていない。これは「清潔病」という名前の病気。
・ウイルスや細菌、寄生虫との「共生」を絶った結果が免疫力を弱めてしまった。
このような内容の論文です。
確かに100年前までは、化学物質も農薬も人工飼料も化学肥料もこの世にはなく多くの生物が共存していました。
戦後の高度成長で、公害に始まる有害環境物質が大きな問題を起こしました。一方石油製品の合成化学、加工製品が形を変えて身近にたくさんあります。これらの製品で私たちの生活が良くなり改善し、経済成長し、お金と時間を得ました。
公害による障害があって目に見えた公害(障害)は排除してきましたが、同時に共生している生物も排除してしまったのかもしれません。この10数年の間に便利な多くの製品開発と並行して、腸内免疫叢の知識、微生物との共存関係が判明してきました。特にこの数年は遺伝子技術の進歩でこの問題が見えてきました。
この化学物質の刺激が、活性酸素を発生させ遺伝子に障害を起こします。これが細胞変性を起こし、さらには
①がん化 ②老化 ③アポトーシスを起こす ことまでわかってきたのです。
「おかげ」か「せい」なのか医療研究と疫学的研究を経る必要があるかもしれません。
(参考文献 『回虫が消えたからアレルギー疾患が消えた』東京医科歯科大学教授 藤田紘一郎)